目安は60℃。短く区切って、こまめに休む。
サウナに子どもと一緒に入りたい。そう考えたときに、多くの方がまず探すのが「何歳から」「何℃で」「何分まで」という具体的な数字だと思います。ところが結論から申し上げると、誰もがそのまま従えばよい、という一律の数字は存在しません。
ハルビアは1950年にフィンランドで生まれ、75年にわたってサウナヒーターをつくり続けてきたメーカーです。その製品を扱う当店でも、お子さんの利用について「何歳から何分まで」という決まった数字をお伝えすることはしていません。理由は単純で、同じ年齢の子どもでも、その日の体調、暑さへの慣れ、そもそもの性格によって、心地よいと感じる範囲がまるで違うからです。数字を決め打ちにするよりも、目の前の子どもの様子を見ながら調整するほうが確実だ、という考え方です。
そのうえで、これだけは共通しているという原則がひとつあります。子どもは必ず大人と一緒に入ること。サウナ室に子どもだけを残さないこと。これは温度や時間の工夫より先に置くべき、いちばん大事な前提です。この記事でお伝えする内容も、すべてこの前提の上に成り立っています。
子どもと一緒に入るときの温度は、約60℃を目安に考えます。大人が心地よいと感じる設定より、はっきりと低いところです。物足りないのではと思われるかもしれませんが、実際に60℃の部屋に入ってみると、じんわりと汗が出てくるまでにきちんと時間がかかります。子どもにはこのくらいがちょうど良いことがほとんどです。
ここで意外と見落とされるのが、「そもそもヒーターをその温度に設定できるのか」という点です。サウナヒーターの温度は、コントロールパネル側で設定できる範囲が機種ごとに決まっています。当店で扱うハルビアのFENIX(フェニックス)は30〜110℃の範囲で設定できますので、60℃という低めの温度にも余裕があります。子どもと入る日は60℃、大人だけで入る夜は高めに、と一台で使い分けられるわけです。Xenio(ゼニオ)をはじめ他のシリーズは機種によって設定範囲が異なりますので、低温でも使いたいというご希望は、機種を決める前にお聞かせください。
岩手の冬を思えば、低め設定はむしろ現実的です。外気が氷点下十度まで下がる日なら、60℃のサウナ室でも内と外の温度差は70℃に達します。数字だけを見て「ぬるい」と決めつけないでください。冬の東北では、60℃でも十分に温かい部屋なのです。
時間については、「何分」と決めないことをおすすめします。短く区切って、こまめに休憩を挟む。これが子どもと入るときの基本です。
大人は10分、15分と時計を見ながら入りますが、子どもに同じ感覚を求めてはいけません。少し入ったら出て、外気や脱衣室で休んで、また入りたければ入る。この出入りの繰り返しそのものが、子どもにとっては楽しい遊びになりますし、無理をさせない仕組みにもなります。ドアの開け閉めが増えれば室温は下がりますが、もともと60℃前後で使っているのですから、そこは気にしなくて構いません。
見るべきは時計ではなく、子どもの様子です。顔が赤くなってきた、口数が減った、そわそわして落ち着かない、だるそうにしている。こうしたサインが出たら、本人が「まだ入る」と言っても切り上げてください。子ども自身は暑さの限界を言葉にするのが苦手です。判断するのは、隣に座っている大人の役目だとお考えください。
そして休憩のたびに水分を。汗をかいた分をこまめに戻すことは、大人よりむしろ子どもに対して意識して声をかける必要があります。「喉が渇いた」と言い出すのを待たず、休憩に出たら一口飲む、という順番にしておくと自然に続きます。
子どもにとってサウナが「暑いのを我慢する場所」になってしまうと、二度目はありません。逆に「楽しい場所」になれば、家族の習慣として続いていきます。
当店がよくお伝えしているのは、水鉄砲や防水のおもちゃを持ち込むという方法です。バケツに水を張って、水鉄砲で遊びながら涼む。それだけで子どもの滞在は「我慢」から「遊び」に変わります。ひとつだけ約束事にしておきたいのは、ヒーターや熱い石に向けて水をかけたり撃ったりしないこと。石に水をかけるのは大人の役目、と最初に決めておくと分かりやすいと思います。
防水スピーカーで音楽をかける、照明を工夫するというのも定番です。サウナ室の照明は明るくしすぎず、間接的にやわらかく灯すほうが落ち着きます。調光できる照明を入れておけば、子どもと入る時間は少し明るく、大人だけの夜は暗く、といった切り替えもできます。当店でもサウナ室用の照明はお選びいただけますので、設計の段階でご相談ください。
「またあの部屋に入りたい」と子どもが言う。それが、家族で使うサウナのいちばん分かりやすい成功だと思っています。
楽しさの前提には、安全の設計があります。ここは後から足すよりも、図面の段階で決めておいたほうが確実に、そしてきれいに収まります。
まずコントロールパネルの位置です。ハルビアのパネルは壁への埋め込みや壁面への取り付けができ、子どもの手が届かない位置を選べます。さらにチャイルドロックをかけられますので、勝手に温度を上げられてしまう心配をなくせます。FENIXにはドアセンサーが付属し、扉の閉鎖を確認できなければ遠隔での起動はしません。小さなお子さんのいるご家庭では、この組み合わせはほぼ必須とお考えいただいて構いません。
次にヒーターまわりです。ハルビアには機種ごとに専用設計されたヒーターガードと遮熱板があり、ヒーター本体に直接触れられないようにできます。走り回る年齢の子どもがいるなら、これは入れておくべきものです。ガードは機種名で選ぶものですから、ヒーターの選定と同時に決めるのがいちばん確実です。なお電気ヒーターは全機種に、過熱時に電源を自動で遮断する安全装置を備えています。
そしてベンチの配置です。上段は熱く、下段はやや穏やかになります。子どもと、あるいは高齢のご家族と入るなら、下段に無理なく座れる寸法にしておくと使い勝手がまるで変わります。工務店や設計事務所の方は、段差寸法と手すりの有無を早い段階で確定させておくことをおすすめします。
岩手では、祖父母と同居する三世代の世帯が今も少なくありません。家にサウナをつくるとなれば、当然おじいちゃん・おばあちゃんも入ります。ここでも考え方は、子どもの場合とよく似ています。
まず温度です。60℃前後という設定は、高齢のご家族にとってもちょうど良いと感じられることが多い温度帯です。三世代で一緒に入る日はこの設定にしておけば、無理なく同じ時間を過ごせます。大人だけの時間に高くすればいいのですから、いつも高温である必要はありません。
そのうえで、常識的な約束事を家族で決めておいてください。体調がすぐれない日は入らないこと。一人では入らず、必ず誰かが一緒か、近くにいること。お酒を飲んだあとは入らないこと。当たり前のことばかりですが、家族の中できちんと言葉にして共有できているかどうかで、実際の安心感はずいぶん変わります。冷蔵庫の扉にでも貼っておくくらいで十分です。
設備の面では、ベンチの高さと手すり、床の滑りにくさ、そして脱衣室の暖かさです。岩手の冬は脱衣室がとても冷えます。サウナ室だけ立派でも、脱衣室が寒いままでは足が遠のきますし、体にも負担がかかります。脱衣室や洗い場の暖房まで含めて計画するのが、東北でサウナをつくるときの現実的な答えだと考えています。
サウナは、我慢比べの場所ではありません。とくに子どもにとっては、家族と一緒に過ごす時間そのものが目的です。60℃の部屋に家族三人で並んで座っている時間のほうが、90℃に一人で入る時間よりも、ずっと記憶に残るはずです。
私たちD'STYLEは、岩手県盛岡市で薪ストーブを長く扱ってきた会社で、サウナも設計から施工まで一貫して手がけています。コントロールパネルの位置、ヒーターガードの納まり、ベンチの段差、脱衣室の暖房まで、ご家族の構成に合わせた細かい部分こそご相談ください。図面の段階からご一緒できると、できることがぐっと増えます。
本文で触れたコントロールとヒーターガードは、こちらからご覧いただけます。
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